1.実験1について 最初の実験では、様々な回路に使われるチップコンデンサとチップインダクタの特性 を調べてみましょう。携帯電話などの民生用高周波機器の市場拡大と開発競争により、 それらに使われる部品も小型化と高周波特性の改善が急速に進みました。何気なく使用 しているチップ部品は、使用している周波数帯において、チップコンデンサはCとして、 チップインダクタはLとして本当に働いているのでしょうか? チップ部品の主流は1005タイプになっていますので、1005タイプのチップコ ンデンサ(積層)とチップインダクタ(積層)の特性を調べてみましょう。Qなどの特 性はメーカーのデータシートにありますので、ここでは回路内で使った場合を想定して 実験します。図1−1に実験基板を示します。長さ30mmのマイクロストリップ・ラ イン(特性インピーダンス50Ω)の中央付近に部品を実装して挿入損失を測定しまし た。図に示すように、コンデンサはラインとGND間に接続し、インダクタはラインの 途中に挿入しました。図1−1 実験基板 ○ 測定器 : HP8753D (Full 2-Port Calibration) ○ 評価部品(今回は手元にあった太陽誘電(株)製の以下の部品を使用しました)
2.実験準備 実験を始める前に、実験基板の50Ωラインの特性を確認しておきます。挿入損失と 入力VSWRの測定結果を図1−2,1−3に示します。全帯域においてVSWRがほ ぼ1.2以下になっていますので、実験基板として問題無いと考えます。
図1−2 実験基板の特性(挿入損失)
図1−3 実験基板の特性(VSWR) 3.チップコンデンサの特性 個々のチップコンデンサの特性を図1−4に示します。各コンデンサの自己共振周波 数は、1000pF:約200MHz,100pF:約500MHz,10pF:約1500MHz,1pF:約4500MHz に あることが判りました。バイアスラインなどのデカップリング・コンデンサは、使用周 波数帯を考慮して慎重に選ぶ必要があることを再認識しました。 一つのコンデンサでは広い帯域をカバーできていません。そこで複数のコンデンサを 組み合わせた場合にどのような特性になるのか調べてみました。図1−5にその特性を 示します。う〜ん。。。
図1−4 チップコンデンサの特性1
図1−5 チップコンデンサの特性2 4.チップインダクタの特性 チップインダクタの特性を図1−6に示します。各インダクタの自己共振周波数は、 56nH:約1400MHz,10nH:約3900MHz,4.7nH:約5800MHzにあることが判りました。高 周波特性が本当に良くなったと感じました。
図1−6 チップインダクタの特性 5.最後に チップ部品には自己共振周波数があります。自己共振周波数を境にして、コンデンサ のインピーダンスは容量性から誘導性へと変わり、インダクタのインピーダンスは誘導 性から容量性へと変わります。アンプなどの能動性回路では、使用周波数帯域外におけ る各部品の特性にも十分に注意を払う必要があります。思わぬ周波数帯で異常発振を引 き起こす場合があります。高調波の特性にも影響を与えます。 (部品が手に入れば、色々なメーカの部品の特性比較が出来るのですが。。。)