CNCの自作とCNCで作る工作



木製(コンパネフレーム)のミニバンドソーを作る
(2018年12月03日)


まえがき
小物部品を切断するのに便利なミニバンドソーが欲しくなり自作してみました。
通常はモーターの出力をプーリー等で減速して使いますが、私が使ったモーターはギアモーターなのでギアヘッドの出力軸に合った
スプロケットギアを選び、これをハブとして使い、駆動ホイールを取り付るシンプルな構造としました。
ミニバンドソーにはプロクソン・リョウビ・ホーザンの各ブランド名で販売されていますが、これらは同じ仕様のOEM製品の様です。
これらに使うブレード(替え刃)は市販されていてネット通販で簡単に入手が可能で、このブレードを利用することを前提に設計しました。

使用部品のリスト
用途部材名品名又は仕様 数量費用
AC100V40Wモーター(新古品)オリエンタルモーター 5IK40-RGN相当品1個送料込み2000円
ギアヘッド(新古品)オリエンタルモーター 5GN5K1個送料込み3000円
フレームの材料ウレタン塗装コンパネ(厚さ12㎜)定尺1枚約1,800円
フレーム枠の材料シナベニア(厚さ5.5㎜)450X900(㎜)1枚手持ち品
ホイールの材料MDF(厚さ15㎜)150X150㎜ 3枚手持ち品
ホイールのタイヤ(平ベルト流用)フレックスターベルト 15-FL-450 2本1本469円
スプロケットギア(ホイールハブに流用)椿本チエイン RS25-1B32T-121個699円
ホイール用ベアリング6201-RS2個1個149円 
アッパーホイールシャフト用ボルトM12、L120㎜1個108円 
アッパーホイール用台付きナットM12、台寸法50X50㎜1個108円 
ガイド用ベアリング696ZZ2個1個109円
アッパーガイドスライドバーアルミプロファイル 20X20 L200(㎜)1本199円
プロクソンブレード(替え刃)木工用及び金属用(幅5㎜、周長1060㎜)各1本1本約2000円
アルミ板t3㎜&t5㎜&t10㎜若干数手持ち品
その他小物類ネジ等若干数手持ち品


1)コンパネを使った木製フレームの製作
下が基本設計図でフレームに厚さ12㎜のウレタン塗装のコンパネ(型枠用合板)を使い、4枚重ねて強度を確保しました。
私は全てCNCフライス盤で加工しましたがCNCをお持ちでない方は鋸やジグソーでカットしてください。

設計図


1枚目は表面から加工(左)と2枚目は裏面から加工(右)の加工図
1枚目にはアルミ補強板埋め込み用の30X80㎜深さ3㎜ポケット加工を行い、加工後に裏面同士を接着します。


3枚目は表面から加工(左)と4枚目は裏面から加工(右)の加工図
加工後に裏面同士を接着します。1、2枚目と3、4枚目はネジ止めです。


ドアー内側は裏面から加工(左)と扉外パネル、シナベニヤt3㎜を加工(右)
加工後に裏面同士を接着します。


フレーム周囲と扉に外枠の取り付け
フレームの周囲には厚さ5.5㎜幅82㎜のシナベニヤ板を枠としてを張り付けますが、私はボンドを使わずに木ネジで止めました。
扉の周囲も同じシナベニア幅20㎜を張り付け、最後に厚さ3㎜のシナベニヤ板を扉の表面にボンドで張り合わせました。
(左)扉のロックには、上下2か所にパッチン錠を取り付けました。(右)塗装前の左側面


2)15㎜厚MDF板を使ったホイールの製作と組み立て
下部ホイール(駆動側)の切削加工
ギアヘッド出力軸とホイールの接続に加工精度が良い、椿本チエイン製軸穴加工済みスプロケットギアを使いました。
このスプロケットギアがホイールに正確に収まるようにCNCを使ってポケット加工を行います。
加工寸法:内径30㎜、外径145㎜、スプロケットギアが入るポケット加工は内径68㎜、深さ5㎜でネジ穴は4㎜です。


通常、自作バンドソーのホイールタイヤに自動車タイヤのチューブを輪切りにして使う方が多いようです。
ここでは、三ツ星ベルト製フレックスターベルトの幅15㎜、周長450㎜を使用しました。
このため、ホイール径が自ずと決まりますが少し大きめの直径145㎜に加工し、後でブレードが中央に収まる
ようにタイヤ装着面の外径を切削加工します。

加工後に15-FL-450平ベルトを装着して完成した下部ホイールです。

上部ホイール(フリー側)の加工
上部ホイールにはベアリングが入るポケット加工を行います。ここでは、10㎜間隔でベアリングを2個使いました。
加工寸法:内径25㎜、外径145㎜、ベアリングが入るポケット加工は内径32㎜、深さ10㎜でネジ穴は4㎜です。
ベアリングホルダーの外径は70㎜で、ポケット加工は上記と同じです。前後のベアリングの間には内径12㎜、長さ10㎜の
鉄製スペーサーを入れて締め付けによる、ベアリングの軸方向に負荷が掛からないようにしてます。


ホイールのタイヤ装着面の加工は下部ホイール同じで後述します。
右画像のネジ穴が3ヶ所余ってますが、このネジ穴はモーターハブに上部ホイールを取り付けてタイヤ装着面の加工時に使います。
この場合、スプロケットギアを前後反対に取り付け、上部ホイールのベアリングがシャフトに入るまで押し込んでネジ止めします。


ホイールのタイヤ装着面の加工
この作業はギアモーターを取り付けた後にホイールをセットし、モーターを回転させて木工旋盤の要領でノミ等を使って
削りますが、怪我をしないように行います。また、一度に削らずに時々ノギスで測定しながら削り過ぎないように注意します。
装着面が平坦だとブレードのアサリにより、必ず手前の端で止まります。
試しに中央部を凹ませて実験したところ外径が大きい手前端で止まることが判りました。そこで、装着面の中央部にブレードが
収まるように図のような形状にしました。
今回タイヤに使った平ベルトは伸び難いのが売りの商品なので、伸び難くて被せるのに苦労しますが、下図右側の傾斜が付いた
方から、偏らないように少しずつゆっくりと押し込むように被せれば上手く出来ます。
余談ですが、ブレード位置の調整に上部ホイールを傾斜させてブレード位置の調整する方もいますが、やはり上下のホイールが
平行に整列するのが原則だと思います。


加工後に15-FL-450平ベルトを装着して完成したホイールです。

上部ホイールの取り付け
上部ホイールが取り付くフレームは木なので、ここに幅30㎜高さ80㎜深さ3㎜のポケット加工を行い、厚さ5㎜のアルミ補強板を
嵌め込みます。これは、半締めの状態でブレードの張りを調整するのでフレームを傷めないための処置です。


後部スライドプレートとアルミ補強板のサイズと加工図
スライドプレートはコンパネの裏同士を2枚接着、上部に10㎜厚アルミ板中央にM6タップを切ってをネジ止めします。
中央にはホイールシャフトM12ボルトが入るΦ12㎜貫通穴を加工した後に台付きナットをネジ止めします。


上部ホイールの組み立て図と後部のスライドプレート


出来上がった後部の様子。ブレードの張り調節は、ホイールシャフトを緩めてスライドプレート上部の調節用ノブを
回して行い、調節後に緩まないように締め付け、スライドプレート後部のダブルナットをロックすればOKです。


3)ギアモーターと下部ホイールの取り付け
ギアモーターはフレームに貫通した94×94㎜の穴にモータープレートを介して取り付けます。
プレートの加工寸法:t3㎜アルミ板122×122(㎜)ギアヘッドの軸部が入る穴径は36.5㎜です。


スプロケットギアは購入時にM4ナベ頭ネジが付属してますが、M4イモネジに交換します。


スプロケットギアにホイール固定用のネジ穴をタップ加工しますが、ホイールに開けた取り付け穴をガイドに
下穴を正確に開けます。(スプロケットギアは単にハブとして利用してます)
モータープレートにギアモーターとスプロケットギアを取り付けた様子。


スプロケットギアをハブとして下部ホイールを取り付けた様子。


下部ホイールには、ごみの付着防止にブラシを設けました。


裏側 ギアモーター取付の様子、黒いパイプは集塵機(家庭用掃除機サイズ)の差込口です。


当初、モーターのギアヘッドに5GN9K減速比9:1を使ってたが、回転が少し遅いので5GN5K減速比5:1に交換しました。
これにより、約82m/分から約148m/分と丁度良い切削速度となり、40Wのモーターですがサクサクと切断出来ました。


4)ブレードガイドの製作
ブレードガイドにはベアリングで挟む方法とシューで挟む方法が有ります。私はケヤキの板を加工したシューを使いました。
また、ブレードの縦方向側の当たり止めにミニチュアベアリング696ZZを横置きに使いました。

上部ブレードーガイド
ガイドバーにアルミプロファイル20X20 L200(㎜)を使い、先端ガイド部はアルミ板t10㎜をCNCで削り出して作りました。
ガイドバーはフレーム板の1枚目と4枚目の間(24㎜)に設置しますが、前後に4㎜の差があるのでガイドバーとフレーム4枚目の
間に厚さ4㎜の木板を入れて遊びをなくしました。また、ガイドバーのストッパーにはアルミ板のブレーキパッドを入れてます。


5㎜幅のブレードのみを使うので最初にシム等で前後の微調整をすれば、以後変更の必要が無く前後調整機能は付けませんでした。


ブレードガイドを下げた時にブレードが丸見えで危険なので、ガイドバーと一緒に上下する安全カバーを設けました。


下部ブレードガイド
こちらも同様にアルミ板t10㎜をCNCで削り出して作り、フレームに直接固定しました。

設置後に前後の調整をする必要がないので調整機能は付けてませんが、必要な場合はシムやスペーサーで対処が可能です。


5)ワークテーブルの製作
テーブルのサイズは235X235㎜、12㎜コンパネに厚さ3㎜のアルミ板を張り付け、マイターゲージを滑らせる溝を設けてます。
使用目的が薄い木材・アルミ板・アクリル板の切断が主なので、テーブルの傾斜機構を省きシンプルな水平固定としました。


ブレードを差し込むスリットによるテーブルのたわみを防ぐためにスリット入り口をM3皿ビスで固定してます。
このビスは、ブレード交換時に簡単に外せるようプラスチック製の長ナット(基板スペーサー流用)を使いました。


動画もご覧ください。


あとがき
出来上がったバンドソーは木板やアルミ板・アクリル板などの直線切りや曲線切りが安全かつ快適に行えました。
今回は、完成後の塗装を出来るだけ省くために、安価なウレタン塗装型枠合板のコンパネを使いましたが、強度が高い
(積層枚数が多い)構造用合板を使われることをお勧めします。また、木材で作る場合(特に合板)は表示値と実際の
厚みに誤差があるので現物に合わせた加工が必要です。

最後までご覧頂き有難うございました。
以上、皆さまのご参考になれば幸いです。

by Paradise

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