高周波回路教室
トップへ > 目次
ひとやすみ(其の三)
恐怖!! しだいに黒焦げになって行くタンタルコンデンサ
それは今年の春のことでした。ある方からこんな相談を受けたのが事の始まりでした。
[事実に基づき(一部記憶があいまいな部分もありますが)再現しています]
<K 氏> 高周波回路の電源ラインに挿入しているタンタルコンデンサが、時間が
経つにつれてしだいに黒焦げになってしまうのですが。
< 私 > コンデンサの定格をオーバーしてはいませんか?
<K 氏> いいえ、定格に対しては十分余裕を持って使っていますし、電源にのっ
ているリップル成分の大きさも全然問題ありません。
< 私 > その部分の回路を教えて頂けませんか?
下図A−2に回路の概略を示します。
さあ、皆さんはタンタルコンデンサが黒焦げになってしまう原因をどう考えますか?
図A−2 黒焦げタンタル周辺回路
さて、私が先ず目を付けたのはVCOの周波数です。2.45GHz、身近なもので
使われている周波数と一緒ですね。そうです、電子レンジで使われている周波数です。
電子レンジは、水の分子を振動させることによって、水分を含むものを加熱しています。
タンタルコンデンサには電解液がありますから、内部に水分が存在します。
次に私が目を付けたのは、タンタルコンデサと並列に使われている積層セラミックコ
ンデンサの容量です。2.45GHzでは、タンタルコンデンサは勿論のこと、このセ
ラミックコンデンサもコンデンサとしては動作していません。
電源ラインにのった2.45GHzの成分によって、タンタルコンデンサ内部の水分
がしだいに加熱され、終いにはタンタルコンデンサが黒焦げになってしまった。私が最
初に考えた原因はこのようなものでした。黒焦げというところがチョット引っ掛ります
が・・・。
☆この時点での私のアドバイスは、
@ 積層セラミックコンデンサを0.1μFから100pF程度のものに変える。
A タンタルコンデンサを積層セラミックコンデンサに変える。
(近頃では10V,10μF程度のものも容易に手に入るようになりましたから)
対策後、
<K 氏> コンデンサを交換したところ、全く問題ありません。
< 私 > そうですか、それは良かった。
これにて一件落着、とりあえず問題は解決しましたが・・・・・。
それから数ヶ月後の今、この「ひとやすみ(其の三)」を作成しながら、本当に原因は電子レ
ンジと同じ加熱作用によるものだったのか、黒焦げというところがどうも引っ掛ってし
まいます。そこで今考えたもう一つの原因は、電源ラインが2.45GHzにおいて低
インピーダンスになっていなかった為に、タンタルコンデンサに逆バイアスが断続的に
かかってしまい(2.45GHzの信号の負の振幅期間においてこの信号の電圧振幅が
直流バイアスを上回り)、漏れ電流の増大やショートといった現象を引き起こし、終い
には黒焦げになってしまった、というものです。電源ラインにのった、2.45GHz
の信号の電圧振幅の観測は、簡単には出来ませんので実証できませんが・・・・・。
もしかしたら、2つの現象が同時に起こっていたのかもしれません。
皆さんはどうお考えになりますか?
会社勤めの現在、会社で実験するわけにもいきませんので、原因究明の実験などはし
ばらくおあずけです。同じような経験をされた方、原因をご存知の方がいらっしゃいま
したら、是非ご連絡を下さい。