高周波回路教室 受動回路

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 1.オープンスタブ&ショートスタブ

   W.ではマイクロストリップ・ラインの様々な受動回路を見て行きましょう。先ず最
  初はオープンスタブとショートスタブです。スタブは、インピーダンスマッチング回路
  やフィルター(V.5参照)など、様々な所で使われます。(日本の)高周波関係の本
  を見ると、伝送線路の入力インピーダンスの説明の辺りに必ず出てきます。図4−1に
  スタブの例を示します。オープン,ショートの各スタブの特性を見てみましょう。


       スタブ(マイクロストリップ・ライン)

        図4−1 スタブ(マイクロストリップ・ライン)


 (1)オープンスタブ

    オープンスタブの入力インピーダンス(Zin)は、式(4.1)で表わされます。
   式の導出過程は様々な本に説明されておりますので、ここでは省略いたします。

          オープンスタブ 式1

   ここでlはスタブの長さを表わしています。βは位相定数(Phase Constant)と呼ば
   れ、その伝送線路上で波が単位長進む間に変化する位相角を表わしています。単位は
   [rad/m]です。つまりβ×lはスタブの電気長を表わしています。電気長をθとす
   れば、式(4.1)は式(4.2)のようになります。
      (β=2π/λ  λ:伝送線路上の波長)

          オープンスタブ 式2
   
   上式から、Zinはスタブの長さと共に変化し、l<λ/4の範囲ではキャパシタとして、
   λ/4<l<λ/2の範囲ではインダクタとして働くことがわかります。さてここで、
   V.5で見たBEFの特性を思い出してください。上式でスタブの長さがλ/4,3λ
   /4,5λ/4,・・・の時の入力インピーダンスを計算してみると0になります。
   V.5のところで、「計算で入力インピーダンスが0になるからBEFになる」と説明
   しないで、「スタブの付け根で電圧が0になるからBEFになる」と説明したのは、ス
   タブに波が乗っている様子をイメージしてもらいたかったからです。式を覚えて計算で
   全てを済ましてしまったら新しい発想が出来なくなります。波長,スタブ長などの物理
   的寸法で特性が決まるマイクロ波回路では、”波”をイメージすることが大切だと私は
   思います。(チョット本題からずれてしまいました)

 (2)ショートスタブ

    ショートスタブの入力インピーダンス(Zin)は、式(4.3),(4.4)で表わ
   されます。式の導出過程は省略いたします。

          ショートスタブ 式1

          ショートスタブ 式2

   上式からショートスタブは、l<λ/4の範囲ではインダクタとして、λ/4<l<λ
   /2の範囲ではキャパシタとして働くことがわかります。さてここで、スタブの長さが
   λ/4,3λ/4,5λ/4,・・・の時の入力インピーダンスを計算してみましょう。
   そうです無限大になります。この時ショートスタブは、BPF(Band Pass Filter)
   として働きます。オープンスタブとは全く逆ですね。この特性を使えば、伝送周波数で
   はオープン回路として働く、GNDへのバイアス経路をショートスタブで作ることが出
   来ます。
 
 (3)実際の回路で

    ショートスタブはその構成上、長さの調整は不可能なので、固定回路として使われま
   す。一方、オープンスタブは長さ調整が容易に出来るので、回路・装置の特性調整回路
   として使われます。
    ガラエポやテフロン基板であれば、カッターと銅箔があれば長さ調整が簡単に出来ま
   す。セラミック基板の場合には、パターン作成時に最初から調整用ランドを設けておき
   ます。図4−2参照。

       オープンスタブによる調整

        図4−2 オープンスタブによる調整  


 2.分配器・合成器 (1)2分配器?