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目次
1.オープンスタブ&ショートスタブ
2.分配器・合成器
(1)2分配回路?
1つの入力を2つ以上に分ける場合、あるいは2つ以上の入力を1つに合わせる場合、
マイクロ波回路ではどうするのか?例えば分ける場合は、図4−3のようにただ単にラ
インを分岐させればいいのか? それでは先ず初めに、図4−3の回路の特性がどうな
るのか見てみましょう。図4−4にシミュレーション回路と結果を示します。
図4−3 2分配回路?
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(a)シミュレーション回路 |
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(b)S11(PORT1 入力インピーダンス) | (c)S22(PORT2 入力インピーダンス) |
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(d)S21(LOSS : PORT1 → PORT2) | (e)S32(ISOLATION : PORT2 → PORT3) |
図4−4 シミュレーション結果(2分配回路?)
先ず(b)のS11を見てください、1GHz(マーカーの所)ではZin=100Ωになっています。
同様に(c)のS22も1GHzではZin=100Ωになっています。次に(d)のS21を見ると、3.5
dBのLOSSになっています。PORT1への入力がPORT2,3へ2分配されているならば、S21
は−3dBにならなければなりません。差の0.5dBはどこへ行ってしまったのか?
PORT1の入力インピーダンスは50Ωにマッチングされていません。このため、入力電
力の一部(約11.1%)が入力端で反射してしまっているからです。
[参考]反射係数 Γ=(Zin−Zo)/(Zin+Zo)=(100-50)/(100+50)=0.3333
PORT1の入力端で反射される電力=|Γ|^2=0.11109≡約11.1%
PORT2,PORT3への出力電力の合計を計算して、検算してみましょう。
PORT1へ入力される電力を1とすると、PORT1からPORT2へ伝達される電力は、
電力(1→2)=10^(-3.5/10)=0.4446
PORT3への電力は、PORT2と全く同じですから、出力電力の合計は、
出力電力=0.4446×2=0.8892≡約88.9%
入力電力=反射電力+透過電力(出力電力)が確認できました。
(PORT2とPORT3は全く同じ特性になるので、PORT3のシミュレーション結果は省略して
います)
それではPORT1の入力インピーダンスを50Ωにマッチングさせてやれば、2分配回路
は完成するのか?答えはNOです。分配回路を設計する上でもう一つ重要な特性があり
ます。それは図4−4(e)に示したアイソレーションです。PORT2,PORT3に接続される
回路が完全に50Ωにマッチングされていることはまずありません。アイソレーションが
十分に取れていないと、PORT2,PORT3に接続される回路のミスマッチングによって、
分配比が変わってしまう等の影響が現れます。図4−4の回路のPORT3に75Ωの負荷を
接続した場合の、S11とS21を図4−5に示します。
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(a)S11(PORT1 入力インピーダンス) | (b)S21(LOSS : PORT1 → PORT2) |
図4−5 アイソレーションの影響
S11,S21の両方とも、PORT3に接続された負荷によって変化しています。特にS21が
大きく変化しています。アイソレーションの重要性を理解して頂けましたか。
それでは次の(2)項で、分配器・合成器として最も良く使われている回路を紹介い
たしましょう。
2.分配器・合成器 (2)Wilkinson couplers