
トップへ > 目次
1.PINダイオード
X.ではスイッチ,移相器,アッテネータなど、信号の流れ,移相,レベルの制御を
行うコントロール回路の構成と基本動作を見て行きましょう。コントロール回路の説明
に入る前に、コントロール回路で良く使われる半導体素子[PINダイオード]とはど
んなものなのか、その構造と特性を見てみましょう。
さて、PINダイオードと名前がついているからには、普通のダイオードと何処か違
うところがあるはずです。PINという名前に、その違いのヒントが隠されています。
普通のダイオード(普通という言葉は的確ではないかもしれません)はP型半導体とN
型半導体の接合によって作られています。それではPINダイオードは・・・、名前を
良く見るとPとNの間にIが挟まれています。そうです、名前がPINダイオードの構
造を示しているのです。P型半導体とN型半導体の間に「I」が挟まれているのです。
ところで「I」って何?
Iとは、Intrinsic、つまり真性半導体の層・領域を表しています。P型半
導体とN型半導体の間に真性半導体を作るのは不可能なので、実際のPINダイオード
では、P型とN型の間に固有抵抗が非常に高いP型またはN型の領域が入っています。
下図5−1にPINダイオードと普通のダイオード(PN接合)の構造を示します。
図5−1 PINダイオードとPN接合
それではこのPINダイオードのどんな特性を利用して、高周波・マイクロ波帯のス
イッチ,アッテネータ,移相器などを作るのでしょうか。ここでPINダイオードの等
価回路を見てみましょう。図5−2に、順方向バイアス時,逆方向バイアス時の等価回
路を示します(かなり簡略化しています)。
図5−2 PINダイオード等価回路
高周波,マイクロ波帯で用いられるPINダイオードの等価回路のパラメータの値は、
Rf : 0.数Ω 〜 数Ω(バイアス電流を十分に流した状態)
Rr : 0.数Ω 〜 数Ω
Cj : 0.数pF 〜 数pF
つまり、順バイアス時には低インピーダンス状態になり、逆バイアス時には高インピー
ダンス状態(リアクタンス成分が主体)になります。このような、順バイアス時と逆バ
イアス時の違いを利用してスイッチや移相器は作られます。Rfの値は、順バイアス電
流を小さくして行くと、それに反比例して大きくなって行きます。バイアス電流とRf
との関係を利用して、アッテネータが作られます。
2.スイッチ (1)基本回路