トップへ > 目次 1.こんな間違い見かけた事ありませんか 突然ですが、ある周波数で入力インピーダンス Zin = 25Ω の回路がここにあ るとします。「さあ、この回路を50Ωにマッチングさせてください。」と言われたら、 あなたはどうしますか。 高周波回路に慣れ親しんだ方であれば、直列にLを入れて回し(スミスチャート上) 次に並列にCを入れて50Ωにもって行く、といったイメージが頭の中に浮かんで来る と思います。しかしこれが、電気回路は解かるけど、高周波回路はちょっとという方の 場合、よく見かける間違いがあります。私が実際に経験した間違いは・・・ それは、私が設計した受信ユニットのサンプルを、あるお客さんに提出したときのこ とでした。 私 「受信ユニットのアンテナ入力の特性インピーダンスは50Ωで設計していま すので、アンテナ入力端子に接続するアンテナも50Ωマッチングさせてくだ さい。」 そして数日が過ぎ、お客さんから、 客 「受信モジュール単体の特性評価結果は、検査成績表の値とほぼ同じ結果が得 られたのですが、アンテナを接続して通信実験を行って見たら、通信距離が全 然とれません。」 私 「アンテナは50Ωにマッチングをとられていますか。」 客 「はい、アンテナの入力インピーダンスが20Ω位なので、アンテナと受信モ ジュールの間に30Ωの抵抗を入れています。」 私 「えっ!!」 (一瞬言葉を失ってしまいました) 確かに、受信モジュールからアンテナ側を見た入力インピーダンスは50Ωかもしれ ません、しかし大きな間違いがここにあります。どこが間違っているの?と思った方は 本回路教室 第1回 を見直してください。 第1回の所でも述べましたが、高周波回路では効率よく電力を伝達する必要があり、 その為にインピーダンスマッチングが重要になります。効率良く電力を伝達する為には 回路の損失を出来る限り少なくしなければなりません。抵抗は電力を消費します。ここ まで言えば、お客さんが冒した大きな間違いが何か、もうお分かりですね。 高周波回路では、回路間のマッチングをとるために抵抗を使うことはまずありません。 マッチングとは違う目的で、例えばアンプの安定係数を上げて異常発振を抑えるために、 抵抗を使うこともあります。 それでは抵抗を使わずにどうやってマッチングをとるのか、次に示しましょう。 2.スミスチャートを使ってのマッチング