高周波回路教室 受動回路2

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 1.90°Hybrid(Branch-Line Coupler)

   V.コントロール回路の移相器のところで出てきた 90°Hybridについて、ちょっと
  詳しく見てみましょう。90°Hybridは、結合度が3dBの coupler(等分配)としてよく
  用いられます。3dBという高い結合度の couplerを簡単に作ることが出来ます(方向性
  結合器のところで出てきた”結合線路タイプ”の Copulerでは難しい)。図1に外観を
  示します。また、長所と短所は、

   ◇長所 : 設計が簡単,DC的にも結合している
   
   ◇短所 : 形状が大きい(占有面積が大きい)
  

            

            図7−1 90°Hybrid (Branch-Line Coupler)


   Port1に信号が入力されると、Port2とPort3に出力が現れ、Port4には出力が現
  れません(設計中心周波数,理想的状態において)。また、このときPort2と3の出
  力には 90°の位相差があります。90°Hybrid は上下/左右対称な形をしております
  のでPort2に信号を入力すると、Port1と4に出力が現れますが、Port3には現れま
  せん。Port3に信号を入力すると。。。この先は言わなくてもお分かりですね。
         X.3.(4)項も参照下さい]
  結合度は、Shunt Arm と Series Arm のインピーダンス比で決まります。関係式を以
  下に示します。

             


   良く使われる 3dB の Couplerの場合、式(7.1)で P2=P3 なので、Zp=Zo に 
  なります。従って式(7.2)の右辺は2になり、Zr=Zo/√2 になります。50Ω系で
  は、Zp=50Ω,Zr=35.4Ω になります。90°Hybrid は基本設計が簡単で、Strip 
  Line,Microstrip Lineなど様々な伝送線路で実現できます。
   最初に短所として「形状が大きい」と指摘しましたが、特性面にも短所があります。
  それは、帯域の狭さです。図7−1の構成では、中心周波数の10%程度の帯域しか得
  られません。帯域を広げるには、もう1本 Shunt Arm を追加し、90°Hybrid を2個融
  合させたような形にします。3dB Coupler で最も帯域が広く取れる構成を図7−2に示
  します。この構成で、25%程度の帯域を実現できます。ただし、形状(占有面積)が
  非常に大きくなってしまいます。各 Arm のラインを折り曲げるなどして、Hybridの小型
  化が図られています。

      

             図7−2 Three-Arm Branch 90°Hybrid


  2-Arm と 3-Arm の 3dB Coupler シミュレーション比較を図7−3から図7−7に
  示します。帯域の改善は、図7−7のS41(Isolation)でハッキリとわかります。 


        

             図7−3 2-Armと3-Arm比較 [S21]


        

             図7−4 2-Armと3-Arm比較 [S31]


        

           図7−5 2-Armと3-Arm比較 [S21](Phase) 


        

           図7−6 2-Armと3-Arm比較 [S31](Phase) 


        

             図7−7 2-Armと3-Arm比較 [S41]

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