高周波回路教室 コントロール回路

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 目次
 1.PINダイオード
 2.スイッチ
 3.移相器 (1)移相とは?
       (2)反射によって位相を変える?
       (3)Loaded Line Type 移相器


 (4)Hybrid Coupled Type 移相器

   1GHzで 90°の移相量を持つ移相器の例を図5−39に示します。また、この回路の
  シミュレーション結果を図5−40に示します。グラフ中、P_ON は PINダイオードが
  ONの時の特性を、P_OFF はOFFの時の特性を表します。また、位相のグラフ中の 
  ANG[PS]の特性は、ONとOFFとの位相差(OFF時を基準にした)、つまり移相量
  を表しています。


            

             図5−39 Hybrid Coupled Type 移相器



          Phase
          Loss
          VSWR

                 図5−40 移相器の特性


   まず、Hybrid の動作について簡単に見てみたいと思います。図5−41のように、
  構成する各枝の長さがλ/4の Hybridを 90°Hybridと呼びます。また、Hybrid は
  Branch-Line Couplerとも呼ばれます。図5−41に示す Hybridの特性を調べてみま
  しょう。図5−42に挿入損失,挿入移相の各特性を示します。
   Port1から入力された信号はPort2と3に半分ずつ分割され出力され、Port4には
  出力が現れていません。また、Port2と3の出力には90°の位相差があります。
     ( Hybrid は、3dBカップラーとして良く用いられます。)


          

                 図5−41 Hybrid


   

               図5−42 Hybridの特性(その1)


   それでは、Port2,3をオープン,ショートにしたらどうなるでしょうか? Port4
  の出力を見てみます。図5−43に挿入損失,挿入移相特性を示します。オープンでも
  ショートでもPort4に信号が伝達されています。それも、中心周波数では全て伝達され
  ています。オープンとショートで最も違うのは挿入移相で、180°違っています。


   

               図5−43 Hybridの特性(その2)


   これってもしかしたら。。。そうです、Port2,3に接続されるリアクタンスを変化
  させてやれば、位相を制御できそうです。そこで、図5−39の移相器で Hybrid に接
  続されている、PINダイオードとラインで構成される回路の特性を見てみましょう。
   図5−44に示す1PORT回路としてその反射特性を見てみます。図5−45にシミュ
  レーション結果を示します。チョットわかりづらいですが、中心周波数の1GHzでほぼ共
  役の関係になっています。位相特性を見るとハッキリとわかります。ONの時の反射位
  相は約−135°でOFFの時には約+135°になっています。Loaded Lineと同様に、共
  役になっていることによって、ON/OFFの切り替えをを行い位相を変化させても、
  中心周波数付近で挿入損失特性,インピーダンス特性の悪化が起こりません。挿入移相
  のみが大きく変化し、移相器として動作します。

               

            図5−44 Hybrid Coupled 型移相器の部分解析


   

                 図5−45 移相器の部分特性

 
   Hybrid Coupled Type 移相器についてもっと詳しく知りたい方は、マイクロ波回路
  の本をご覧ください。Hybrid については、後でまた詳しく説明いたします。

  次項では、移相器の最後として、2信号を合成するタイプの説明を簡単に行います。


(5)2信号を合成して位相を変える