高周波回路教室 受動回路2

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 目次
 1.90°Hybrid(Branch-Line Coupler)

 2.Rat-Race(Magic Tee)

   Rat Race。。。ねずみの競争?。。。辞書で Rat Race を調べると、「無駄な競争,
  悪循環」と載っていました。こんな変な名前の回路が一体どんなモノなのか、見て行
  きましょう。図7−8にこの回路の外観(平面回路の場合の)を示します。

           

                図7−8 Rat-Race(Magic Tee)


   図に示すように、Port A−B,B−C,そしてC−D間はλ/4離れて配置され、
  Port A−D間は3λ/4離れて配置されています。この配置によって、各Port間の
  入出力関係がどうなるのか見てみましょう。

  ◇ PortCに信号を入力した場合

  ・ まずPortBには、Cから時計回りに5λ/4だけリングを進んだ波と、Cから反
   時計回りにλ/4進んだ波が到達します。これらの2波は同相になるので、足し合
   わされたものがBに出力されます。
  ・ PortDもBと同様に、時計回りと反時計回りの波が足し合わされて出力されます。
  ・ さて、PortAはどうなるか?AにはCから時計回りにλ進んだ波と、Cから反時
   計回りにλ/2進んだ波が到達します。これらの2波は逆相になるので打ち消され、
   AはCから Isolate された形になります。

    従って、PortAは全く関係なくなり、Cから見るとBとDの2つの Port が対称
   に配置された回路のようになります。つまり、Cからの入力はBとDに等分配され
   て出力されます。この時、BとDからの出力は同相になります。

  ◇ PortAに信号を入力した場合

  ・ まずPortBには、Aから時計回りにλ/4だけリングを進んだ波と、Aから反時
   計回りに5λ/4進んだ波が到達します。これらの2波は同相になるので、足し合
   わされたものがBに出力されます。
  ・ PortDは、Aから見ると時計回り,反時計回り共に3λ/4の位置にあるので、
   波が足し合わされて出力されます。
  ・ さて、PortCはどうなるか?CにはAから時計回りにλ/2進んだ波と、Aから
   反時計回りにλ進んだ波が到達します。これらの2波は逆相になるので打ち消され、
   CはAから Isolate された形になります。

    従って、PortCは全く関係なくなり、Aから見るとBとDの2つの Port が配置
   された回路のようになります。つまり、Aからの入力はBとDに分配されて出力さ
   れます。この時、BとD出力の位相は逆相(180°位相が違う)になります。

  全部同じ導体でつながっているのに、信号が出てきたり、出てこなかったり、高周波
  の世界って面白いと思いませんか?

  PortC,PortAに信号を入力した場合の各特性を、シミュレーションで確かめてみま
  しょう。図7−9から図7−12にシミュレーション結果を示します。 


        

                  図7−9 PortC入力
             C→A:S21,C→B:S31,C→D:S41

        

                図7−10 PortC入力(Phase)


        

                  図7−11 PortA入力
             A→B:S21,A→C:S31,A→D:S41

        

                図7−12 PortA入力(Phase)


 3.λ/4変成器(transformer)