高周波回路教室 マッチング回路

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 目次
 1.こんな間違い見かけた事ありませんか
 2.スミスチャートを使ってのマッチング

 3.素子値の算出

   2.項で示した@〜Dのマッチング回路例の各素子値の求め方を以下に示します。
  スミスチャート上での動きがハッキリと判るように、ここでは10Ωの抵抗と10nH
  の直列回路の1GHzにおけるマッチングを考えます。
   この回路の1GHzでの入力インピーダンスは、Zin = 10+j62.8Ωになります。
  50Ωで正規化すると、Z = 0.2+j1.26 です。先ず、スミスチャート上にこの点を
  プロットします。この点の正規化アドミタンスは、Y = 0.12−j0.78 です。
   それでは始めましょう。

  @並列コンデンサ+直列コンデンサによるマッチング

    この点を等コンダクタンス円に沿って移動させた時に、中心を通る等レジスタンス
   円とぶつかる点のインピーダンス,アドミタンスをチャートから読み取ると図2−7
   に示すようになります。Z,Yの値の変化注目すると、Zは実数部と虚数部の両方が
   変化していますが、Yは虚数部のみ変化しています。このYの虚数部の変化から、必
   要な素子を求めることが出来ます。先ず、Yの虚数部のみ変化しているということか
   ら、直列の素子ではなく、並列の素子であることが判ります。サセプタンスがプラス
   方向に変化していますから、その並列素子がコンデンサであることが判ります。
    それではコンデンサの値を求めてみましょう。虚数部(正規化サセプタンス成分)
   の変化量は 0.45 です。したがって、

         C = 0.45/50/2πf = 1.42pF

    次にこの点を中心を通る等レジスタンス円に沿って移動させ、チャートの中心に持
   って行きましょう。中心は、Z= 1.0+j0,Y= 1.0+j0 ですから、先の点から
   移動させたときに、Zは虚数部のみ変化し、Yは実数部と虚数部の両方が変化します。
   Zの虚数部のみ変化するということから、直列の素子が必要であることが判ります。
   また、リアクタンスがマイナス方向に変化していますから、その直列素子がコンデン
   サであることがわかります。
    それではコンデンサの値を求めてみましょう。虚数部(正規化リアクタンス成分)
   の変化量は 2.66 です。したがって、

         C = 1/(2πf×2.66×50) = 1.20pF

   マッチング@解説
   図2−7 マッチング@解説


  A直列コンデンサ+並列インダクタによるマッチング

    等レジスタンス円に沿って移動させ、中心を通る等コンダクタンス円との交点に持
   って行きます。次に、等コンダクタンス円に沿って移動させ中心に持っていきます。
   各点のZ,Yの値は下図を参照してください。@と同様にして、各素子の種類と値を
   求めることが出来ます。各素子の計算式のみ示します。

       直列C = 1/(2πf×1.66×50) = 1.92pF

       並列L = 1/(2πf×2.00/50) = 3.98nH

   マッチングA解説
   図2−8 マッチングA解説


  B並列コンデンサ+直列インダクタによるマッチング

    等コンダクタンス円に沿って移動させ、中心を通る等コンダクタンス円との交点に
   持って行きます。今度は@とは別のもう一つの交点まで移動させます。次に、等レジ
   スタンス円に沿って移動させ中心に持っていきます。各点のZ,Yの値は下図を参照
   してください。@と同様にして、各素子の種類と値を求めることが出来ます。各素子
   の計算式のみ示します。

       並列C = 1.11/50/2πf = 3.52pF

       直列L = 2.66×50/2πf = 21.2nH
    
   マッチングB解説
   図2−9 マッチングB解説


  C直列伝送線路(50Ω)+直列コンデンサによるマッチング

    中心から 0.2+j1.26 の点(A)に引いた直線の延長線と、チャートの外周との
   交点に示されている角度の値を読み取ります。およそ76°になると思います。次に、
   A点を通る円(チャートの中心をその中心とする)と、中心を通る等レジスタンス円
   との交点を求めます。そして、中心からその点に引いた直線の延長線とチャートの外
   周との交点に示されている角度を読み取ります。およそ31°になると思います。し
   たがって、角度の変化は45°になります。反射を見ていますので、実際に必要な線
   路の電気長はこの半分、つまり、

         直列伝送線路 = (76−31)/2 = 22.5°
       
    次に、等レジスタンス円に沿って移動させ中心に持って行きます。

         C = 1/(2πf×3.33×50) = 0.96pF
       
   マッチングC解説
   図2−10 マッチングC解説


  D直列伝送線路(50Ω)+直列インダクタによるマッチング

    これはBとCの組み合せです。図2−11を参照ください。

   マッチングD解説
   図2−11 マッチングD解説



 4.マッチング回路構成をどうやって決める?