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目次
1.オープンスタブ&ショートスタブ
2.分配器・合成器
3.方向性結合器
(1)結合線路
アナログあるいはディジタル回路で、ある信号ラインの信号が他のラインにのってし
まい困った経験をお持ちの方も多いことと思います。基板上のパターン間には、多かれ
少なかれ電磁結合が存在します。低周波回路,ディジタル回路でこの電磁結合を積極的
に利用することはまず無いと思います。高周波回路ではこれを積極的に利用し、様々な
機能を持つ回路が作られています。
それでは、平行に配置したマイクロストリップライン間にどのくらいの結合があるの
か、平行に配置されたラインの間隔を変えてシミュレーションしてみましょう。シミュ
レーションで使用した各パラメータは以下の通りです。各ラインは、1GHzにおいて特
性インピーダンスがほぼ50Ω、長さが約1/4波長になっています。
[ 基板条件 : 誘電率εr=2.6,厚さh=0.6mm,導体厚t=18μm ]
[ パターン : 幅w=1.6mm,長さL=50mm ]
図4−11にシミュレーション回路を示します。
図4−11 結合線路
PORT1を入力とした時に、他のPORTにはどのくらいのレベルの信号が現れるのか、ラ
イン間隔(s)を変えてシミュレーションした結果を図4−12に示します。
図4−12 ライン間隔と結合度のシミュレーション結果
シミュレーション結果から、ライン間隔をどんどん狭くして行っても、一方のライン
から他方のラインへと伝達できる量には限界があることがわかります。また、PORT1か
ら入力した場合に、その結合出力はPORT2から取れば良いことがわかります。さらにじ
っくりとその特性を見てみると、PORT1から入力した場合に、PORT2とPORT3の出力レベ
ルが全く異なっています。レベル差が10dB近くありますから、「PORT2には出力が現れ
るけれども、PORT3には出力がほとんど現れない。」と言ってもいいでしょう。それで
は、PORT4に信号を入力したらどうなると思いますか?そうです、PORT3には結合出力が
現れるけれども、PORT2には出力がほとんど現れません。ある方向には伝わるが、逆方
向には伝わらないこの特性を次項でもうちょっと詳しく見てみましょう。
(2)項に移る前に、結合線路の位相特性と、もっと広い帯域での特性を見てみまし
ょう。位相特性を図4−13に、広帯域の特性を図4−14に示します。
図4−13 結合線路の位相特性
図4−14 結合線路の特性(広帯域での特性)
位相特性で特徴的なのは、1GHzにおいてPORT4の出力の位相が90°遅れ(λ/4
のラインを通過しているので自明)、結合出力のPORT2の出力は位相遅れが0°になっ
ていることです。さらに、結合が疎の場合(ライン間隔が広い)には、PORT3の出力は
位相遅れが180°になっています。
広い帯域で見た特性では、PORT2の結合出力に分布定数回路の特徴である”繰り返し”
が現れています。
3.方向性結合器 (2)方向性