高周波回路教室 コントロール回路

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 目次
 1.PINダイオード
 2.スイッチ (1)基本回路

 (2)特性改善

   さて、ダイオード1個では十分なアイソレーションが得られず(スイッチOFFの状
  態に対応するバイアスの時)、このままではスイッチとしては使えそうもないことが判
  りました。それでは、アイソレーションを悪くしている原因は何処にあるのでしょう。
   Seriesの場合は、逆バイアス時のCjに原因があります。数GHzの周波数では、1pF
  程度のCのリアクタンス値は大きな値になりません。Cjは使用するダイオードによっ
  て決まってしまいます。Cjを小さくするには・・・。Cjを直列に2個つなげば、総容
  量はCj/2になります。PINダイオード2個を Seriesに伝送線路に挿入した場合の
  特性を図5−9に示します。図中の各特性曲線の名前(例 PIN_F)のF,Rは、バイア
  スの状態(それぞれ順バイアスと逆バイアス)を表しています。1個の場合と比べれば
  確かにアイソレーションは改善されています。しかし。。。


 

            図5−9 Seriesに2個挿入した場合のS11,S21特性


   それではShuntの方はどうでしょうか。Shuntの場合は、順バイアス時のRfとLに原
  因があります。RfとLがある為に、順バイアス時に完全にショートになりません。Rf
  とLを小さくするには・・・、そうです並列にダイオードをもう一つ挿入すれば、1/2
  にすることが出来ます。PINダイオード2個を並列にして Shuntに伝送線路に挿入し
  た場合の特性を図5−10に示します。こちらも1個の場合と比べれば確かに改善され
  ています。しかし。。。


 

            図5−10 Shuntに2個挿入した場合のS11,S21特性


   同じものを単純に2個使っただけでは、十分な特性の改善が図れないことが判りまし
  た。さあどうしましょう? ここまでは、SeriesとShuntを切り離して考えてきました。
  それでは、SeriesとShuntを組み合わせたらどんな特性になるのでしょうか。早速みて
  みましょう。図5−11にSeries+Shunt構成の略図とスイッチとの対応を示します。
  また、この回路の特性を図5−12に示します。


     

              図5−11 Series + Shunt 構成


 

            図5−12 Series + Shunt のS11,S21特性


 
  SeriesとShuntの組み合わせにより、ONの特性,OFFの特性の両方とも改善されて
  います。これを基本ユニットとして、複数個つなげば更に良いアイソレーションが得ら
  れるでしょう。ここまでみてきたスイッチの構成はSPST(Single Pole Single
  Throw)と呼ばれるものです。次の項ではSPDTスイッチをみてみましょう。


(3)SPDTスイッチ