高周波回路教室 マッチング回路

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 目次
 1.こんな間違い見かけた事ありませんか
 2.スミスチャートを使ってのマッチング
 3.素子値の算出
 4.マッチング回路構成をどうやって決める?

 5.これは大切、基準面!!

   さてここでは、図2−12のように基板に実装されたある回路のマッチング調整を、
  ネットワークアナライザを使って行う場合の注意点を説明します。

    被測定回路

    図2−12 被測定回路

   調整を行う前に、先ず最初に測定系の校正を行う必要があります。一般には、図2−
  13に示すように、ネットワークアナライザに接続されたケーブルの先端で、校正を行
  います(1PORT Calibration の場合には、OPEN,SHORT,LOADの校正)。校正が終了
  すると、ケーブルの先端が測定の基準面になります。
   測定系の校正が出来ましたので、図2−14のように被測定回路にケーブルを接続し
  て、測定・調整を始めましょう。DUTとコネクタを接続する50Ωラインの所にマッ
  チング回路を作り上げることにします。ネットワークアナライザの表示をスミスチャー
  トにして、調整前のインピーダンス特性を確認します。

    測定系

    図2−13 測定系

    接続・測定

    図2−14 接続・測定

   ここで、任意の部品(L,C)を50Ωラインの任意の位置に直列に挿入したとしま
  す。スミスチャートに表示された波形は、前項までで説明してきた動きとは全く別な動
  きを示すでしょう。なぜか?それは、測定の基準面と調整ポイントが一致していないか
  らです。測定を行っているのは基準面での値であって、調整ポイントでの値ではないか
  らです。ケーブルとコネクタの接続点に部品を入れることは出来ません。さあどうしま
  しょう?
   ネットワークアナライザには、Electrical Delay という電気長を補正する為の機能
  が備わっています。この機能を使うことにより、測定の基準面を移動させることが出来
  ます。図2−15に示すように、部品を挿入したいところでラインをカットします。ネ
  ットワークアナライザの表示は図2−16のようになるでしょう。それではElectrical
  Delay メニューを呼び出し補正を行いましょう。キーノブ等を使用して、Electrical
  Delay の値を調整して、図2−16のA点のところで波形がほぼひとかたまりになるよ
  うにします。これで補正が完了しました。カットした所が測定の基準面になります。
   カットした部分を接続して、新しい基準面でのインピーダンスを測定しましょう。次
  に、カットした所に任意の部品を挿入してみてください。予想通りの動きを示すはずで
  す。
   高周波回路のインピーダンス測定では、基準面がどこにあるのか常に意識して下さい。

    基準面の移動@

    図2−15 基準面の移動@

    基準面の移動A

    図2−16 基準面の移動A