トップへ 目次 1.集中定数と分布定数 2.マイクロストリップ・ライン 3.マイクロストリップの回路 4.集中定数部品(チップ部品)の限界 ここ数年、携帯電話の急速な普及と小型化によって、それに使用されるチップ部品の 高周波特性改善・小型化も急速に進んでいます。今や1005タイプ(1.0mm X 0.5mm) が当たり前のようになっています。2GHz程度の回路でも、分布定数ではなく集中定 数で形成されるようになっています。 それでは、チップ部品(抵抗,コンデンサ,インダクタ)が使用できる周波数限界は どこにあるのか?ちょっと考えてみましょう。 低周波であれば、チップ抵抗は抵抗,チップコンデンサはコンデンサ,そしてチップ インダクタはインダクタとして働きます。しかし、周波数が高くなるに従って純粋なR, C,Lとは違った特性を示すようになります。それはなぜか、各部品の等価回路にその 理由が示されています。チップ部品といえども、その電極の導体抵抗や電極間の静電容 量等さまざまな寄生成分を持っています。各部品の等価回路とその周波数特性を順番に 見てみましょう。 [注] 以下で示す周波数特性はシミュレーション結果です。実測値ではありません。 シミュレーションで使用した寄生成分の値も実測値ではありません。実際に設計 を行う場合には、部品メーカーからデータを入手するか、実測を行ってください。 [チップ抵抗] 等価回路を図3−5に、インピーダンスの周波数特性を図3−6に示します。周波数 特性の縦軸はインピーダンスで単位は[Ω]です。赤い線で示されているのが抵抗分で、 緑の線で示されているのがリアクタンス成分です。図3−6の上部に示されているのが シミュレーションで使用した各素子の値です。 [ 50Ω,1nH,0.5pF ] 寄生成分によって、周波数と共に抵抗分が変化しています。図3−5 チップ抵抗の等価回路
図3−6 抵抗の周波数 vs インピーダンス特性 [チップコンデンサ] 等価回路を図3−7に、インピーダンスの周波数特性を図3−8に示します。 [ 20pF,1MΩ,1nH ] 寄生インダクタと直列共振回路が形成され、共振周波数以上ではリアクタンス成分が 誘導性(+)になっています。
図3−7 チップコンデンサの等価回路
図3−8 コンデンサの周波数 vs インピーダンス特性 [チップインダクタ] 等価回路を図3−9に、インピーダンスの周波数特性を図3−10に示します。 [ 22nH,0.5Ω,0.5pF ] 寄生容量との間で並列共振回路が形成され、共振周波数以上ではリアクタンス成分が 容量性(−)になっています。
図3−9 チップインダクタの等価回路
図3−10 インダクタの周波数 vs インピーダンス特性 ☆ コンデンサ,インダクタでは、寄生成分との間に生じる共振周波数(自己共振周 波数)以上で、リアクタンスの極性が反対になっています。この自己共振周波数が コンデンサ,インダクタ本来の特性での使用限界になっています。 5.集中定数回路と分布定数回路の特性比較