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目次
1.集中定数と分布定数
2.マイクロストリップ・ライン
3.マイクロストリップの回路
4.集中定数部品(チップ部品)の限界
5.集中定数回路と分布定数回路の特性比較
V.の最後に、集中定数回路と分布定数回路の特性比較を行ってみます。比較対象と
して単純な回路構成のBEF(Band Elimination Filter)を選んでみました。集中定
数と分布定数のBEF回路を図3−11に示します。(a)の回路はただの直列共振回
路なので説明は要らないでしょう。さて、(b)の分布定数回路の方ですが、OPEN
スタブの長さは中心周波数においてλ/4(λ:波長)に設定されています。この為、
中心周波数(fo)においてスタブの先端では電圧振幅が最大になり、スタブの付け根
では電圧振幅は0になっています。foにおいてスタブの付け根があたかもGNDもよ
うに振る舞う為、BEFとして働きます。
それでは各回路の通過特性を見てみましょう。集中定数回路場合の特性を図3−12
に、分布定数回路の特性を図3−13に示します。中心周波数fo = 500MHz で設計し
ました。集中定数の方は寄生成分を考慮してあります。分布定数の方は、500MHzで90°
の電気長(λ/4)を持つ理想的なオープンスタブでシミュレーションしています。
[注] 寄生成分の値は、前項V−4.で使用した値を使いました。
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(a)集中定数回路 |
(b)分布定数回路 |
図3−11 BEF回路
図3−12 集中定数BEF 通過特性
図3−13 分布定数BEF 通過特性
図3−12の集中定数回路の方は、500MHzの所だけでBEF特性を示しています。
一方、図3−13の分布定数回路の方は、2GHzまでの範囲で500MHzと1500MHzにBEF
特性が見られます。図3−13を良く見ると、1GHz毎に同じ特性が繰り返しているよ
うに見えませんか。それでは分布定数回路の方だけ5GHzまで見てみましょう。シミュ
レーション結果を、図3−14に示します。
図3−14 分布定数BEF 通過特性A
綺麗に、1GHz毎にBEFの特性を繰り返しています。なぜ?
500MHzでλ/4のオープンスタブは、1500MHzでは3λ/4に相当します。つまり、
1500MHzでもスタブの付け根の電圧振幅は0になっているのです。同様に、2500MHzで
も、3500MHzでも・・・・・。
分布定数回路を設計する場合には、使用する周波数の3倍の周波数くらいまでの特
性確認を行った方がよい思います。
ついでですから、集中定数回路の方も5GHzまでの特性を見てみましょう。
図3−15 集中定数BEF 通過特性A
5GHz付近で僅かに寄生成分の影響が現れています。