高周波回路教室 コントロール回路

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 目次
 1.PINダイオード
 2.スイッチ
 3.移相器 (1)移相とは?

 (2)反射によって位相を変える?

   電気的に位相を変える方法には、前項の線路切り替え方式のほかに、反射による位相
  変化を利用する方式と2信号の合成による方式が有ります。ここでは前者の反射による
  位相変化を利用した方式を見てみましょう。
   反射による位相変化と聞いて ??? となってしまった方は、高校の物理の教科書
  でも見てください。「光の反射・屈折」のところで反射と位相変化の説明が出てくるは
  ずです。光と同様に電気信号も波ですから、どこかにぶつかれば反射して位相も変わり
  ます。光の場合は媒質の境界面で反射を起します。それでは電気信号の場合は・・・。
  そうです、インピーダンスが変化する所で反射を起します。

   先ずは、下図のように特性インピーダンス50Ωの伝送線路の途中に色々なものを接
  続し、反射を起させ、位相がどのように変化するのか見てみましょう。


           

              図5−26 位相の変化を調べてみよう


  伝送線路の電気長は90度(at 1GHz)とします。何も接続されていない時の通過位相
  特性は図5−27のようになります。電気長が90度ですから、1GHzで−90°になってい
  ます(挿入位相=90°)。


           

              図5−27 伝送線路のみの通過位相特性


  ○コンデンサ(C)を接続 (伝送線路の中央に)

    0pF,1pF,2pF,3pF,4pF,5pFと変化させた時の挿入移相・損失の変化を
   下図に示します。Cの値を大きくするに従って、挿入移相・損失共に大きくなってい
   ます。


    

                   図5−28 伝送線路 + C


  
  ○インダクタ(L)を接続 (伝送線路の中央に)

    100nH,30nH,10nH,5nH,3nHと変化させた時の挿入移相・損失の変化を下図に
   示します。Lの値を小さくするに従って、挿入移相は小さくなり、挿入損失は大き
   くなっています。


    

                   図5−29 伝送線路 + L


  
  ○ Short Stub を接続 (伝送線路の中央に)

    Short Stub の電気長を 90°,80°,70°,60°,50°と変化させた時の挿入
   移相・損失の変化を下図に示します。短くするに従って、挿入移相は小さくなり、
   挿入損失は大きくなっています。


    

                   図5−30 伝送線路 + Short Stub



  ○ Open Stub を接続 (伝送線路の中央に)

    Open Stub の電気長を 0°,10°,20°,30°,40°と変化させた時の挿入
   移相・損失の変化を下図に示します。長くするに従って、挿入移相は大きくなり、
   挿入損失は大きくなっています。


    

                   図5−31 伝送線路 + Open Stub


  伝送線路に接続する素子の値によって、挿入位相を調整できることが判って頂けたと思
  います。しかし、大きな問題が一つ有ります。それは、挿入損失の悪化です。伝送線路
  にL,C,Stubのようなリアクタンス素子を接続したことによって反射(ミスマッチ)
  が起こり、損失が大きくなっています。もちろん入出力のインピーダンス特性も悪化し
  ています。挿入損失や入出力のインピーダンスを悪化させずに位相を変えるには。。。

  その解決策の説明は次項で。
  
(3)Loaded Line Type 移相器