トップへ 目次 1.PINダイオード 2.スイッチ 3.移相器 4.アッテネータ (1)固定アッテネータ コントロール回路としてのアッテネータは可変アッテネータがそれにあたります。可 変アッテネータはその方式により2つに分けることが出来ます。一つは半導体素子のバ イアス等をコントロールすることによってアナログ的に連続して減衰量を制御できるも の、そしてもう一つは固定アッテネータ回路とスルー回路をスイッチで切り替えること によりディジタル的に減衰量を制御する方式です。そこでまず、可変アッテネータの説 明の前に固定アッテネータについて調べましょう。 回路内での固定アッテネータの用途は、(a) レベル調整,(b) 安定性の改善,(c) マッ チングの改善 が主なものでしょう。(b),(c)はどちらかを狙ってアッテネータを使えば、 他方も改善される関係にあります。 レベル調整以外の用途で固定アッテネータが使われるのは、 ・発振回路の出力 ・ミキサーのLO入力やIF出力 ・アンプの出力 など ・発振回路は、その出力に接続される負荷の影響を多かれ少なかれ受けます。そこで、 負荷の影響を受け難くし、発振回路の安定性(周波数,出力レベル)を良くする為に、 アッテネータが使われます。一般的には数dB程度のアッテネータが使われます。 (但し、アッテネータを挿入する為には、出力レベルに余裕がなければなりません) ・ミキサーでは、LO(局部発振回路),IF(中間周波回路)とのマッチングを良く する為に使われます。例えばリターンロスが6dBしかないポートに3dBのアッテ ネータを接続すれば、リターンロスは6dB改善され12dBになります。 (一般的に使われるのは3dB程度でしょう) ・アンプの場合、入出力共にマッチングをとるのが非常に大変です。そこで、出力レベ ル,P1dB等に余裕がある場合に、出力にアッテネータを挿入して出力インピーダン スの改善を図る場合があります。(出力に余裕がある場合なんて殆どありませんが) では固定アッテネータの回路を見てみましょう。回路構成は図5−49に示すように、 T型とπ型があります(Y−Δ変換によって:T型←→π型)。図5−49 π型,T型アッテネータ アッテネータの減衰量をL(dB)とした時に各抵抗の値は以下の式で求めることが出来 ます。これらの式は、各回路について連立方程式を立てて解けば求められます。
例えば3dBのアッテネータは、 (Zo=50Ω) ・ π型 : R1=R2=296.5Ω,R3=17.6Ω ・ T型 : R1=R2=8.6Ω,R3=141.9Ω 最後に、アッテネータの挿入によるリターンロスの改善をチョット見てみましょう。 図5−50(a)に示す1ポート回路のリターンロスが、3dBのアッテネータ挿入に より(b)どう変わるか、そのシミュレーション結果を図5−51に示します。 コンデンサだけの場合には全反射になるので、リターンロスは0dBになっています。 3dBのアッテネータの挿入によりリターンロスが約6dB改善されていることがわか ります。上記計算値のような半端な値の抵抗はないので、入手可能な近い値の抵抗値で シミュレーションを行いました。 <追加> 3dBのアッテネータの挿入により何故リターンロスが6dB改善されるのか? ・ (b)の回路に入力された信号はアッテネータにより3dB減衰します。 ・ コンデンサに到達した信号はここで全反射されます。 ・ 反射された信号は、再びアッテネータを通過する時にまた3dB減衰します。 ・ こうして行と帰りでトータル6dB減衰されます。 ・ リターンロスは入射電力と反射電力の比ですから、6dBとなります。 ・ (a)が全反射で0dBでしたから、6dB改善されたことになります。
図5−50 アッテネータの効果検証回路
図5−51 アッテネータの効果のシミュレーション結果 (2)可変アッテネータ