トップへ 目次 1.ミキサはなぜ必要なのか 2.信号を”混ぜる”とは? 3.パッシブ・ミキサ 4.DBM 図7にDBMの回路図を示します。文献によっては、図7のようにダイオードがクロ スした形ではなく、リング状に配置された回路図が紹介されている場合もあります。 図7の接点に付けた1〜4の番号を順番に追って行くと(1→2→3→4→1)、ダイオー ドが一つながりになっています。図7の接続を変えずに、図面上でダイオードがクロス しないように書き換えた回路図を図8に示します。図7と図8の、ダイオードの部品番 号(D1〜D4)と接続点番号(1〜4)は対応しています。クロスした形から、リング状へ と書き換えることが出来ました。図8−7 DBM@
図8−8 DBMA 図7の回路で基本動作を見て行きましょう。DBMはLO入力信号によって駆動され ます。動作説明をするにあたって、LO信号入力は十分に大きな振幅を持つ(直列に接 続された2個のダイオードを順バイアス:ONできる振幅)、Duty=50%の矩形波とします。 DBMの動作は、LO信号の極性等によって、3つの状態に分けられます。状態毎に説明 を行います。 (1)LO信号入力が無いとき LO信号入力が無いとき、図7のD1〜D4全てのダイオードは導通していないOFF状態に なります。このとき図7の回路は、図9に示す回路と等価になります。RF入力とIF出 力が完全に切り離された状態になります。したがって、RF入力は伝達されず、IF出力 には何も信号が現れません。
図8−9 LO入力:なし (2)LO信号入力が正の半サイクルのとき LO信号によって、D1,D2は順バイアスされて、導通したON状態になります。一方、 D3,D4は逆バイアスされて、導通していないOFF状態になります。このとき図7の回 路は、図10に示す回路と等価になります。RF入力信号は図中に→で示すように伝達 され、IF出力へ現れます。
図8−10 LO入力:正の半サイクル (3)LO信号入力が負の半サイクルのとき LO信号の極性が正の半サイクルとは逆ですから、LO信号によってD1,D2は逆バイ アスされて、導通していないOFF状態になります。一方、D3,D4は順バイアスされ て、導通したON状態になります。このとき図7の回路は、図11に示す回路と等価に なります。RF入力信号は図中に→で示すように伝達され、IF出力へ現れます。IF 出力のトランスでの信号の流れは、図10に示す正の半サイクルとは逆になります。し たがって、IF出力信号の移相は、正の半サイクルに対して反転したもの、つまり位相 が180度異なるものになります。
図8−11 LO入力:負の半サイクル 図12にRF信号入力,LO信号入力、そしてIF信号出力の各信号波形の関係を示 します。LO信号の極性によって、IFに出力されるRF信号の位相が反転を繰り返し ています。位相の反転部分は信号が不連続になり、歪を生じます。この歪の部分で、様 々な周波数成分が生まれます。不連続部分はLO信号周波数に関係する周期で生じてい ますので、RF信号とLO信号の周波数に関係する周波数成分を生じます。
図8−12 入出力波形で見るDBMの動作 ここまでの動作説明は、高い周波数のRF信号を低い周波数のIF信号に変換する、 つまり受信回路でDBMを使う場合を暗に想定したものでした(Down Conversion)。 さて、図10,図11のDBMの基本動作を良く見てみると、信号の伝達方向はRF入力 からIF出力だけでなく、IF出力からRF入力への伝達も同じように行える、可能で あることに気づかれると思います。図13のようにIFから信号を入力し、RFから信 号を取り出しても良いことがわかります。この使い方は、低い周波数のIF信号を高い 周波数のRF信号に変換する、送信回路でのDBMの使い方です(Up Conversion)。 つまり、同じDBMを送信回路と受信回路のどちらにも使うことが出来ます。
図8−13 逆に使う 5.アクティブ・ミキサ