高周波回路教室 受動回路2

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 目次
 1.90°Hybrid(Branch-Line Coupler)
 2.Rat-Race(Magic Tee)
 3.λ/4変成器(transformer)
 4.バイアス回路  (1)集中定数で構成


 (2)分布定数で構成

   集中定数回路に続いて、分布定数で構成したバイアス回路を見ていきましょう。

  ◇ バイアス回路5

   先ず最初に、図7−27に示す回路を見てみます。この回路は、直流〜低周波にお
  いて接地回路として働きますので、バイアス電流のリターン回路,0Vバイアス回路,
  静電気対策回路などとして使われます。

  
                図7−27 バイアス回路5


   経験的に、λ/4の長さの高い特性インピーダンスのライン(細いライン)で接地
  していると思いますが、インピーダンスはどれくらいが最適なのか、高ければ高いほ
  ど良いのか、考えたことがありますか?図の等価回路で、ラインの特性インピーダン
  スを 15Ω,50Ω,150Ωと変えてシミュレーションした結果を、図7−28に示しま
  す。各伝送線路は理想的なものとして、シミュレーションを行いました。シミュレー
  ションで 15Ω,150Ωという値をなぜ使ったかというと、マイクロストリップライン
  で一般に実現可能な特性インピーダンスが、この範囲程度だからです。
   シミュレーション結果から、特性インピーダンスが高ければ高いほど、広帯域化で
  きて良いと言えます。ただし、パターンを形成する導体の厚さはガラエポやテフロン
  基板等で 18μmか35μm,セラミック基板等で薄膜のパターンの場合には数μmしかあ
  りませんから、大電流を流す回路の場合には、パターンが焼損しないよう注意が必要
  です。
   ショートスタブの働きについては、Passive回路 PartT 1.の項を参照下さい。

     

                図7−28 バイアス回路5の影響


  ◇ バイアス回路6

   図7−29に示すように、λ/4のラインを介して、バイアスを供給する場合の影
  響を調べてみます。ラインのインピーダンスを変えてシミュレーションした結果を、
  図7−30に示します。各伝送線路は理想的なものとして、シミュレーションを行い
  ました。特性インピーダンスが低いほど、コンデンサの影響が出ています。

  
                図7−29 バイアス回路6


     

                図7−30 バイアス回路6の影響


  ◇ バイアス回路7

   最後に、図7−31のようにバイアス回路6のコンデンサの代わりに、λ/4のオ
  −プンスタブを接続した回路の影響を調べてみます。マイクロ波回路でよく見かける
  パターンです。主伝送線路から引き出すラインの特性インピーダンスを 150Ωとして、
  それにつながるオープンスタブの特性インピーダンスを変えて(15Ω,50Ω,150Ω)、
  シミュレーションした結果を、図7−31に示します。各伝送線路は理想的なものと
  して、シミュレーションを行いました。
   シミュレーション結果から、特性インピーダンスが低ければ低いほど、広帯域化で
  きて良いと言えます。

  
                図7−31 バイアス回路7


     

                図7−32 バイアス回路7の影響


   何故この回路が、ショートスタブと同じような特性になるのか?

   考え方1 : λ/4オープンスタブの付け根は、中心周波数において高周波的に
         接地されているとみなすことが出来るので、Z1のラインは高周波的に
         はショートスタブと等価と考えられる。
   考え方2 : Z1,Z2のラインを合わせると、長さはλ/2になる。オープンスタ
         ブの先端で電圧振幅最大なので、そこからλ/2離れた伝送線路との
         接続点でも電圧振幅最大になる。