microwave(高周波)

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はじめに

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 30代半ば過ぎになると、プロジェクトの工程管理を任されるようになったんです。私は人に仕事をまかせる、命令することが得意な方ではありませんでした。自分で設計をして物を作る方がずっと好きだったので、どうせ若い人を教育するのであれば、独立して色々な企業のチームに入って設計のお手伝いをしながら教育をした方が、ずっとやりがいがあるのではないかと思いました。

-- 独立に対する不安はありませんでしたか。

 私の場合、設備投資がほとんどかからない職種だったので、安易に独立できた面もあるのかも知れません。設立当初から、事務所も自宅のリビングを利用していたので経費はかかりませんでしたし…。余計な見栄をはらないことは、とても大切なことだと思っています。

-- 独立して良かったと思うことはありますか。

 そうですね。会社員として働いていると、自分のやりたい仕事というのはなかなかまわってこないものなんですよ。自営業だと選択の幅が広がると言うか…、自分のやりたい仕事や興味のある仕事を選ぶことができるので良かったと思います。もちろん自営業として大変なこともありますけどね。

-- 現在の日本の技術力に関して不安に感じていることはありますか。

 メーカーが人を育てる余裕がなくなってしまったというのも原因のひとつだと思いますが、ソフト業界もハード業界も、技術者が経験を積める場所、訓練できる場所がなくなってきているということです。ソフトも日本では作らなくなり、中国やインドの技術力に頼っている状況だと思います。私の現役の頃は、最後の砦(とりで)だったSEだけはメーカーの人間でしたが…、今の日本の技術者は工程管理が主な仕事になっていると思います。

 技術は教科書だけで教えられるものではありません。先輩から直接学んだり、自分で実際に経験を積んで学んでいき、受け継がれていくものだと思います。一回途絶えると次の世代には伝えることができないものなんです。今の日本の技術者には訓練できる場所、「道場」が必要だと思います。

-- これから力を入れていきたいことはありますか。

 電磁気学の基礎の基礎、根元的なところの勉強、教育は必要だと思っています。私自身、学生の頃はよく分かっていなかったんですよ。電気電子工学の中では一番避けていたところでした。おそらく、今の時代でも電磁気学をやらざるをえなくて困っている技術者が多いような気がします。今はシミュレータというツールもあるので、もっと楽しく、できる限り式を使わないで勉強できれば、興味を持って勉強をする人も多くなるのかなと思っています。

 【インタビューを終えて】
 当日は小暮さんの自宅のリビング兼事務所でインタビューをさせて頂きました。インタビューには設立当初より仕事のサポートをされている奥様も同席されました。設立当初から夫婦二人三脚の変わらないスタイル。同じように夫婦で仕事をしている私たちの目標です。


 文・イラスト:市川古都美

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